木質バイオマスのガス化に関する研究



木質バイオマスとは木に由来するエネルギー資源のことです.

木は光合成を行い大気中の二酸化炭素を吸収します.

木材を燃焼させたときに発生する二酸化炭素は,光合成で吸収したものと同量なので,長いスパンで見たとき大気中の二酸化炭素濃度は増加しないと考えられています.

しかし,木材は固形なので燃料としては取り扱いが面倒です.

木質バイオマスのガス化とは,特殊な炉で処理して木材を可燃性ガスに変換する技術です.

取り出したガスはエンジン発電機の燃料として使用して,電気エネルギーに変換するのが一般的です.

研究としては様々な条件でガスを生成して,ガスクロマトグラフィーという分析装置でガス成分を調べることを行います.



ガス化とは



木材のなどの有機物を,十分に酸素があるところで加熱すると大部分はCO2とH2Oに変わり,灰が残ります.
いわゆる燃焼です.

熱によって有機物が熱分解を起こし,H2,CXHY,COなどの可燃性ガスが生成され,これに火が付いて燃えます.

有機物の加熱を低酸素の状態または無酸素の状態で行うと,火が付かないので可燃性ガスを取り出すことができます.
これがガス化の基本原理です.

木質バイオマスのガス化原理



実験装置



本研究では,ガス化に密閉型ガス化炉を用いています.

ガス化炉内を予め脱気することで,無酸素下でガス化を行えます.

ガス化実験装置



研究内容



① インドネシア産ゴムノキのガス化
インドネシアは世界第2位の天然ゴムの生産量を誇り,広大なプランテーションでゴムノキが栽培されています.

天然ゴムはゴムノキの樹液から作られますが,生産性を高めるために25年程度で伐採して若木を植林していきます.

ゴムノキの樹液採取

切り倒される老木は1年に4千万トンにもなり,これはバイオマス資源として有望です.

しかし,ゴムノキのガス化の研究はあまりされていないので,そのガス化特性を調べています.


② 海水を含んだヒノキのガス化
東日本大震災では津波が大量のガレキを海に運び去り,いまも多くが海上を浮遊しています.浮遊しているガレキのほとんどは倒壊家屋から出た木材です.

これらはいずれ太平洋に面した国々の沿岸に漂着しますが,海水を含んだ木材を燃やすとダイオキシンが発生するので,焼却処分をするにはダイオキシン対策のされた高性能な焼却炉が必要になります.

一方,真空状態でのガス化処理では,ダイオキシンを発生させることなくガレキを可燃性ガスに変えることができます.

これまでの研究で海水を含んでいることで,ガスをより多く生成できることが分かりました.